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定位脳手術:局所性ジストニア

   

どーも。ykです。

ひょんなことから局所性ジストニアになってしまい闘病を余儀なくされたyk。

局所性ジストニアとはなんぞや、ということを世の中に理解いただければと思い書きます。

また、同じような悩みを持ち、自身が局所性ジストニアであるかどうかわからないという方にも一つの考え方と捉えてもらえたらなと思います。

局所性ジストニア

ジストニアには全身性ジストニアと局所性ジストニアがあるそうです。

ここでは後天的に発症してしまう局所性ジストニアについて語ります。

まず局所性ジストニアとは、「局所性」とある通り、体の局所に限定的に発症します。

筋肉の運動のうち、自分の意志で動かさずとも勝手に動く運動を不随意運動と言います。

たとえば心臓です。

心臓は自分の意志で動かせず、勝手に動いてくれます。

なので心臓は不随意運動で動いています。

この不随意運動が出るべきではないところに発症するのが局所性ジストニアです。

ykさんの場合は右手の手首より先、おもに人差し指から小指までに発症しました。

ykさんの症状

僕の場合の症状を書きます。

なんか変だな?と思ったのは会社でキーボード操作をしてる時でした。

なぜかキーを打ってる時に、曲げてるはずの薬指がピンと伸びてました。

無理やり曲げれば曲げれるんですが、意識しないでキーパンチしてると勝手に薬指が伸び
ます。

何これ?とは思ってましたが特に支障がないので気にしてませんでした。 これが10年以上前のことです。

そこから1~2年ほど経ち、キーボードを触る時だけ伸びてしまう薬指が自分の意志では無理やりでも曲げることができなくなりました。

キーを触ってない時には普通に曲げれる薬指。

しかしキーを触って少し柔らかく指を曲げた状態にしようとすると伸びて勝手に力が入った状態になりました。

時を同じくして、そのときガチでやっていたダーツにも影響が出てきました。

柔らかくフワッと持っていたはずのダーツですが、薬指が影響して柔らかく持てません。

それでも気にせず投げてましたが、症状は治まることなく真綿で首を締めるようにゆっくり確実に悪化していきました。

薬指から始まった不随意運動でしたが、ついには人差し指から小指までが自分のコントロール下にはなく勝手に伸びるようになりました。

これダーツやキーボードを触るときだけではなく、箸を持つ、シャツのボタンをかける、財布から小銭をとる、字を書く、などなどいろいろな「指をある程度まげて使うシーン」で出るようになりました。

少し曲げた状態をキープしようとすると震えまで出てきました。

思い通りに動かない指ではダーツのような繊細なスポーツは無理です。

釣りにおいても右手でロッドを持ってると指がうずうずして気持ち悪い。

という状態になり、趣味だけではなく生活面においても小銭をよく落としたり、ボタンをかけるのにモタモタしたりと支障がでました。

病院を受診し言われたのが「放置しても治らないどころか、ゆっくり何年もかけて進行する」といったことで、僕はそれを聞いて手術を受けることを決意しました。

ジストニアになる原因は?

原因ははっきりとは特定されておらず「たぶんこれが原因じゃね?」くらいしか解明されてないそうです。

よく言われるのは「何度も繰り返し同じ動作を正確に、あるいは規則的に動かすと発症する」ようなことが言われてます。

というのも、この局所性ジストニアは音楽家(ピアニストやギタリスト、ドラマーなど)や、たくさん字を書くような仕事(事務職)などに発症する人が多く、そのほとんどの人が「繰り返し正確に何度も動作する」という共通点があります。

ならない人もいます。

というか、発症しない人が普通で、なってしまう人は稀です。

僕の場合、何が原因だったか?を考えると二つの行為が頭に浮かびます。

まずはダーツ。

そしてパソコンのキーボード。

どちらの行為も何時間も同じ動作を繰り返し、正確性も求められる行為です。

どちらが原因かは正直わかりません。

心因性の病気やイップスと同じに扱われることも多いことからメンタルクリニックやスポーツ整体、鍼灸院などに通う人もいるそうです。

主には神経を薬でコントロールするか、外科手術などで悪い部分を破壊するか、というアプローチがあると思います。

どこで受診する?何科?

僕は初めに脳神経内科を受診しました。

いきなり外科に行くのは得策とは思えません。

外科手術にはもちろんリスクがあり、内科での治療は薬や麻酔で不随意運動のコントロールを試みます。

これが上手くいく人もいます。

内科治療は薬が気に食わなかったら薬をやめれば元通りです。

外科手術は1度やってしまうと元に戻せません。

脳の一部を破壊する脳外科手術では「体の別の部分の麻痺」「手術中の脳内出血」「手術の合併症」などのリスクがあります。

そのため内科から通い始めて、いよいよどうにもならん重度となったら外科手術を受けるのが一般的なようです。

手術について

僕がもし誰かに「この手術はオススメですか?」と聞かれたら、オススメしません。

ただし、人それぞれでいろいろな人生があり、局所性ジストニアで閉ざされた未来というものを自分で経験してきました。

その経験から本気で手術を受けたいという方の考え方は尊重します。

さて、手術ですが一言で表すと「強烈」です。

半端ではありません。

強&烈です。

手術の時間は短く、1時間程度です。

しかし、手術日は朝の準備から始まります。

朝一。

さわやかに目覚めるも、頭にフレームを装着するためいきなり4発の麻酔を頭皮(デコに2 発、後頭部に2発)に打たれます。

これで朝一のさわやかさが吹っ飛びます。めちゃくちゃ痛いです。

さらに麻酔が効いてきたらフレームを装着します。

頭が1ミリたりとも動かないようフレームから針のようなものが突起しており、それを頭に刺して固定します。

この針はラチェットレンチでデコと後頭部に打ち込まれ、骨まで到達して固定されます。

レンチでギュウギュウに締め付けられ、デコと後頭部からは血がダラダラと流れます。

フレームを装着した後は病室へ戻り休憩です。

とはいえ昼の手術まで何時間も休憩です。

頭をどのくらいのトルクで締め付けられてるかは知りませんが、頭が割れるように締め付けられつつ、わりと重たいフレームを装着したままボーっとその時を待つので、ずーっと頭が痛いです。

そして頭が重たいので首がやられます。

さて手術。

頭に重たいものを付けてるので車椅子移動です。
綺麗な手術室に通されて手術台へと上がりますが、このとき頭につけたフレームと手術台
がドッキングして固定されます。

固定後は足をばたつかせようが、腕を振り回そうが、首から上の頭は骨ごと固定されてる
ので動きません。

むしろ暴れると首がやられるでしょう。

で、いよいよ頭皮をメスで切るんですが、この時の麻酔も痛い。

麻酔が効くと、あとは「なんか引っ張られてんな」くらいですが、頭皮をメスで切開し、
頭蓋骨を露出させるようです。

そして、いよいよドリルが取り出されます。

医療用なのかDIY用なのか知りませんが、とにかく手術室にウィーンが響きます。

で、頭蓋骨へドリルを当て、意識がある状態で穴をあけます。

これが地獄です。

拷問ですか?というレベルです。

頭蓋骨に穴をあけるためドリルでゴリゴリゴリゴリとやりますが、頭に直接全部が響きます。

振動で焦点が定まらず聞いたことがないような轟音に包まれます。

「あ、これ少しのミスで簡単に死ぬやつやん」と思いました。

スコーンっという抜けた感触が頭中に響き渡りドリルはストップ。

どうやら穴があいたようで、先生が「生きてる?」と声をかけてくれました。

「どうでしょう?」と返答したと思いますが、正直言ってこちらに余裕はありません。

拷問後にぐったりしてる暇もなくテストをされました。

このテストは「脳のこの辺に電気を流したらこの患者はどうなるか?」を見るためのもの。

何度か電気を流されると呂律が回らなくなるピンポイントや、右側半分がビリビリしびれるポイントがわかりました。

このとき脳には針がズッポシと刺さってます。

串刺しです。

針を脳に刺すとき、感触はありませんが、首に少し圧迫感のようなものを感じました。

※針と表現してますが正確には電気プローべ?というらしい(記憶が曖昧)

大脳を通過して視床下部という、わりと奥の方まで差し込んだようで、生きた心地はしません。

そしてあらかたのテストが終わると何もつながってないパソコンのキーボードを手渡されます。

これを疑似的に打ち続けたまま脳神経の一部を熱破壊し、変化を見るという手術のようで
す。

とはいえ実際に脳神経の一部を熱で破壊するので「ごめん、間違えた。」は人生終了のお知らせです。

先生の話声に緊張感が出て「じゃあ、やるよ。キーボード打ち続けて」と言われます。

その瞬間の変な感じは今でも覚えてます。

右手から何かが消える感触。

大切なものも悪いものも消えるような感触。

まったくリアクションを取れませんでした。

予定では「熱っ!!」って言ってやろうと準備してましたが、噂通り脳には痛覚がないらしく何も頭に変化はありません。

そんなことより右手の劇的変化に驚きすぎてノーリアクションです。 そして上記のような「じゃあ、やるよ」が合計で2回ありました。

もし3回目をやろうとしたら止めようと思うくらい右手から何かが消えていく恐怖があり ました。

で、実際にキーボードを触っていた手ですが、マジで劇的変化です。

悪いものが何もかも消え、全てにおいてコントロールできます。

そんな感動に浸っていると先生から「熱を与えたまわりが浮腫むから、1日もしたら動か しにくくなるよ」といったことを言われました。

脳がやけど→浮腫む→浮腫みがなくなり完治、という流れだそう。 浮腫みが引けていくのは個人差があり1~3か月とか言ってたと思います。

そして術後は頭を上げることを禁じられるので、体は元気ですが絶対安静の状態となるの で24時間ベッドに寝たきりとなります。

トイレも行けないため尿瓶を渡されます。

僕の場合、ベッドの上で用を足すという行為を受け入れられず、24時間のオシッコ我慢耐 久24となってしまいました。

これも地味な地獄です(笑)

手だけではない

そんなこんなで1か月程度で完治と言っていいレベルまで僕の右手はもとのように器用に なりました。

僕の場合は右手に症状が出ましたが、右利きのギタリストでは左手が多いのかな?

ドラマーは足に出るらしい。

喉のジストニアもあるみたい。

いたるところに発症する可能性のある局所性ジストニア。

体に不随意運動が出たら、一度専門の受診に行くことをオススメします。

その不随意運動は局所性ジストニアではないかもしれませんが、診断が難しい病気のようなので自己判断ではなく専門医への受診をしてください。

リハビリ

リハビリというとおおげさになってしまいますが、先生には「とにかくたくさん手を使っ
てください」と言われます。

僕の場合、術後の後遺症として「歯ブラシしてると喉を突いてしまう」「書字に違和感がある」「キーボード操作がゆっくり」「箸を上手く扱えない」「呂律が怪しい」などが出
ました。

出ましたが、ゆっくり行えば全部できるし、1か月もすると気にならなくなりました。

たくさん手を使ってあげると手術で破壊した脳神経は別の手段で再生されるようです。

また、軽いやけどの状態になるので、破壊したそばには水が溜まります。

これでまわりの神経が圧迫されて後遺症が多く出るようです。

日が経つと気にならなくのは溜まった水がなくなって圧迫がとけるからと思います。

まわりにジストニアの人がいたら

あまりそういう機会も無いでしょうが、僕の場合は周りの人には「特別扱いはしないでほ
しい」と思ってました。

右手が不器用なだけです。

ジストニアだからと休んだところで病気の進行は遅くならようです。僕もそうでした。

ので休めと言われるのも面倒くさいです。

で、術後に心配から「あんまり動かさない方がいいんじゃない?」みたいなことをよく言われましたが、医者からは「破壊された脳神経がまた別のルートでつながる。

だからリハビリはとにかく右手を使って脳を刺激してください。」という指示でした。

なのでたくさん動かすことがリハビリになるそうです。

最後に 私の頭には穴が開いており、そこをセラミックで蓋してます(笑)

ジストニアという病気になり、たくさんの苦悩を経験しましたが、今思うといい経験でした。

手術が行えない部位へ発症する人もいるそうで、自分は右手でラッキーだったと思ってま
す。

そして僕の人生を変えてくれた三愛病院の平孝臣先生に感謝いたします。

この病気の認知度は低いと思います。

僕も実際に経験するまではこんな病気があるなんて知りませんでした。

この病気を認知してもらう機会を増やし、理解してくれる人を増やすことが今の僕の望みかもしれません。

 - バス釣りテクニック

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